東京遠征日記
農林水産省政策駐村研究員 情勢報告


門構え
 新宿駅より久々に満員電車に乗り山の手線駒込駅にて乗り換え、京浜東北線にて一駅上中里駅にて下車。
 資料にあった地図を見ながら徒歩10分途中所在地を人に聞き無事到着。新宿より30分、東京を思わせない雰囲気の中にあった政策研究所。
 初めて国の機関から仕事の用件をいただき物怖じしない心構えでしたが、平常心を保つのは容易ではありませんでした。
 門前で写真撮影をしているところで職員の方に会釈されましたがご挨拶をしてそのまま撮影しながら1歩踏み入れました。
原稿
 私が情勢報告する内容はやはり地域の実情を汲み取るべきだと考え、それの基づきほうこくしました。これらの内容はいずれHP等で公表されると分っておりましたので、事実を柔らかな表現で納めました。
                           環境保全型農業の地域展開

                                福井県美浜町興道寺 あぐり弥幾 代表 西野顕樹

 環境保全型農業は家畜糞尿を使用することが前提条件のように受け取られているが違う側面を持つことを実感している。当方が位置する福井県美浜町は隣の三方町と合弁で家畜糞尿と家庭生ゴミを堆肥化しそれを地域に還元する事業が16年秋にに本格的に稼働した。現況ではまだ製品が出来上がっていない状況であるが、これから地域に普及していく為の課題を取り上げてみた。尚、私共あぐり弥幾は平成4年に肉牛堆肥生産組合の立ち上げに携わり構成員として十数年の経過がある。
@ 生産量が多いので大規模農家に受け入れてもらうことが必要
 美浜町は稲作単作地帯であり、三方町は稲作と梅の複合栽培を主としている。堆肥化施設が生産する堆肥は多く、両町の圃場を全てまかなえる程である。水田や樹園地に大量に施すことが求められている。農業の主流は担い手などの規模の大きい農家であり、これら農家が今後の消費量を増減させる動向の鍵となる。
 散布料金は10a当たり1t6,600円の予定となっており、かなり高いと感じている。慣行栽培での化学肥料との比較において収量が同じであれば数倍の肥料代になる。初年度においては散布量は堆肥の成分によっても異なるが3~4tを必要とするのではないかと推測している。堆肥を使用するにおいても土壌条件が異なるが化学肥料を連用してきた圃場は微生物相が貧弱であり有機物施用の効果が現れ難い。堆肥の肥効を補うために化学肥料もしくは微生物資材の投入が伴うかもしれない。
 大規模農家になれば相当な額の経費増を迫られる。これとは別に追肥作業も新たに必要となり、このような重労働は慣行栽培からの転換を計れば計るほど供に増えていく。初年度等は行政からの補助などがあるかもしれないが大規模農家の意識の変換も必要であろう。販売する価格が優遇されるなどの措置も必要であるし、これを契機に販売方法のシフト転換が起るかもしれない。美浜町として産地作り交付金の使途に有機物を施用した圃場には10a当たり1,000円が交付される見込みである。
 これらとは別に経験談であるが、堆肥を大型機械で散布するとどうしても畦畔にまで到達する。畦畔の雑草に肥料を施す状態になり、草の身長が格段に良くなる。草刈の回数が増えたり、長い草を刈るという重労働を招いている。家畜飼料は大半が輸入されており、それらに混入した外来種子が圃場で繁茂して草生が大きく変化することもあった。

A 大半の材料となる乳牛の家畜糞は季節により変化する
 家畜糞尿は給餌される餌によって成分が大きく異なり、特に乳牛の糞尿は年間を通して大きく変動していると思われる。四季のある日本においては高温時と低温時の差が激しく尿の量が大きくことなる。摂取する水分量も排出する尿の成分に大きく影響している。これらは出来上がる堆肥の製品の成分に由来しているので、安定していなければ品質の面で使用するのが難しくなる。水田圃場のおいては毎年決まった時期に施用すればこれらの影響は少なくて済むが畑作は使用する時期が幅広いので留意しなけばならない。
 家庭の生ゴミも堆肥の原料になっている。家庭で出される量は出来上がる製品の量からすると影響がないと思われるが、美浜町と三方町には民宿が多くあり冬に訪れるお客が多い。その場で振舞われる料理は魚貝類が大半であり、そこで生じた生ゴミも搬入されると思われる。魚貝類に含まれる塩分が堆肥化において微生物の活動に大きく影響する要因にもなりかねない。
B 短期間での効果が両側面では現れない
 前述してあるが堆肥施用効果は短期間では現れ難い。堆肥には水溶性の高い肥料分が含まれているので即効性を発揮することもあるが、植物体内へと移行し辛い元素も多々ある。有機物を施用して本来の効果が得られるのは5年10年もしくはそれ以上と学術されてもいる。まだまだ土の中には解明されていないことが多いのが確かであるが、それを踏まえての使用する意識が必要であろう。その経過によって意識が薄れていくことも懸念されるが環境保全型農業に取り組む上での重要課題である。転換を計ったその時から即それら作物の価値が上がるわけでもないので、環境保護の面・金銭面の両側面での効果は現れ難い。

 これらの事業は始ったばかりであり、今後推移を見守りながら使用する側・経験者として助言出来ればと考えている。これとは別に環境保全型農業推進を消費者に供にアピールする努力をしたい。

速記
 私が今回初めて参加して驚いたのは会議室に速記専門の書記がおられたことです。国会などでは議長席近くに5・6人速記の方がテレビ中継などで映っていたのを見たのですが、さすが国の機関議事録をきっちりとるのですな、感心してしまいました。座席の目の前にあるマイクは速記用でして発言はワイヤレスマイクを使用しました。今回は原稿をソフトな表現にしましたが発言も考えながら行いました。考えてもやはり言いたい事は言わねばなりません。結局勝手なことばかりではありませんが自分自身で責任を持てる発言が出来ました。
 
来年も次も次も、残りあと3回続く。
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